年金に関することQ&A
年金相談をやっているとよく聞きますが、年金はよくわからないといわれます。相談員をしていても、わからないことがあり、わかりにくい制度にしているのではないかと思えるくらいです。
年金については、各個人ごとに年齢、配偶者の有無や国民年金・厚生年金の加入状況で違いますので、その人にあった回答をしなければなりません。
相談員をやっていて、よくある質問をQ&Aで書いてみましたので、参考としてください。
Q1 加給年金と振替加算とは何ですか。
A1 老齢年金の請求する際に加給年金がありますと言うと、よくわからないとしてよく質問され、家族手当(扶養手当)と考えてよいものですと答えています。
〇加給年金
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算されます。
配偶者 388,900円(特別加算含む) 配偶者は65歳未満なので、年下の配偶者のみとなり、配偶者が65歳に達するまで支給。
老齢年金の請求の場合、子供は該当が少ないので金額等割愛します。
〇振替加算
夫(妻)が受けている老齢厚生年金や障害厚生年金に加算されている加給年金額の対象者になっている妻(夫)が65歳になると、それまで夫(妻)に支給されていた加給年金額が打ち切られます。このとき妻(夫)が老齢基礎年金を受けられる場合には、一定の基準により妻(夫)自身の老齢基礎年金の額に加算がされます。これを振替加算といいます。
また、妻(夫)が65歳より後に老齢基礎年金の受給権が発生した場合は、夫(妻)が受けている老齢厚生年金や障害厚生年金の加給年金額の対象者でなくても、一定の要件をみたしている場合に妻(夫)自身の老齢基礎年金の額に加算がされます。
対象となる人は、昭和41年4月1日生まれまでの人です。
注意すべき点は、配偶者が年上の場合ですが、加給年金は支給されませんが、本人が65歳に到達したときに、配偶者に振替加算が支給されます。
手続きが必要となりますので、年金事務所に相談してください。
Q2 繰り上げと繰り下げとは何ですか。
A2老齢年金の支給は、原則65歳からもらえることになりますが、希望すれば、60歳からの支給が可能です。これが「繰り上げ」といいます。また、66歳以降からもらえることもでき、75歳まで伸ばすことも可能です。これを「繰り下げ」といいます。繰り上げると減額された年金額となり、繰り下げると増額された年金額となります。
年金相談では、「繰り上げ」、「繰り下げ」の話は必ずするようにしています。
Q3 繰り上げの注意点は何ですか。
A3
1 一生減額された年金を受給(月0.5%減) (2022年4月から月0.4%対象者S37.4.2以降の方)
2 障害基礎年金に該当しても受給できない
3 寡婦年金の受給権の消滅
4 遺族年金の受給権が発生しても65歳まで併給されない
5 繰り上げは取り消せない。
6 老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰り上げが必要
7 老齢基礎年金を繰り上げ受給している人は、任意加入し被保険者になることができない
8 厚生年金に加入しても繰り上げ支給の老齢基礎年金は全額支給
9 雇用保険の手続きをすると停止(厚生年金だけ、基礎年金は対象外)
10 繰り上げの損益分岐点は16年8か月(0.5%対象者)20年11か月(0.4%対象者)
60歳は76歳8か月 63歳は79歳8か月 0.5%対象者
60歳は80歳11か月 63歳は83歳11か月 0.4%対象者
メリットとデメリットがあるので、十分に考慮して決めることをお勧めします。
手続きをしますと取り消せません。
60歳の誕生日の前日から手続き可能です。
Q4 繰り下げの注意点は何ですか。
A4
1 繰り下げ期間中の年金はもらえない。(期間中はいつでも65歳にさかのぼって請求できる)
2 月数*0.7%の増額(70歳まで42%増)
3 令和4年4月以降は、75歳まで可能(75歳まで84%、S27年4月2日以降生まれた方対象)
4 65歳時点で障害や遺族年金の受給権のある人は、原則繰り下げ受給できない
(65歳以後は障害基礎年金と老齢厚生年金の併給が認められるので、老齢厚生年金の繰り下げのみ可能)
5 加給年金受給可能な人が、老齢厚生年金の繰り下げをした場合、加給年金は支払われない。振替加算も繰り下げると停止となる。
6 増額率 月数*0.7%(70歳まで42%増)
S27.4.2以降に生まれた方がR4.4月以降に繰り下げを申し出された場合、75歳まで可能(75歳まで84%増)
7 老齢基礎年金、老齢厚生年金の別々に繰り下げしてもよい
8 繰り下げの分岐点(11年11か月)
66歳(77歳11か月) 70歳(81歳11か月) 75歳(86歳11か月)
9 在職老齢年金で停止されている厚生年金(報酬比例部分)は増額対象とならない
増額されたとしても、税金・社会保険料などに影響があるので、分岐点はもう少しさきになると思われる。繰り下げについても、健康寿命や病気になったときなどいろいろなことも考慮の上、判断するとよいと思います。いまのところ繰り下げする人はそれほど多くはありません。
繰り下げの請求は66歳の誕生日の前日から手続き可能
Q5 65歳以降も働くので、繰り下げを考えていますが、年下の配偶者(5歳下)がいるので、厚生年金は検討した方がよいと言われました。どのようなことでしょう。
A5 65歳から繰り下げを検討しているとのことですが、65歳からの老齢厚生年金に加給年金(令和4年度年間388,900円)が支給されます。
老齢厚生年金を繰り下げると全額もらえなくなり、加給年金も停止されます。加給年金はその後増額されませんし、もらうときに該当していないと支給もされません。繰り下げで増額するより加給年金をもらう方が有利となります。(配偶者との年の差が少ししかない場合などを除いて)
また、65歳以降も働くとのことなので、在職老齢年金で年金が調整になる場合がありますが、繰り下げの増額は年金停止された金額には反映されませんので、この場合はあまり増えることがないこともあり得ます。一度年金事務所で試算してもらい、考えた方がよいでしょう。
この場合は、老齢基礎年金だけを繰り下げするなどを検討してくださいと進めています。
Q6 現在厚生年金に加入して働いていますが、働いていると年金が減らされると聞きましたが、どうなりますか。
A6 厚生年金に加入して働いている場合や70歳以上で厚生年金保険の適用事業所に勤めている場合は厚生年金の額と給与や賞与の額に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。これを「在職老齢年金」といいます。
年金(基本月額)+(標準報酬月額+1年間の標準賞与額/12)=
47万以下 全額支給
47万超える場合 超えた額の2分の1が停止する。
*2022年4月から65歳までの限度額が28万から47万に変更となりました。
*65歳からもらえる老齢基礎年金は調整されません。老齢厚生年金の報酬比例部分だけが対象となります。
Q7 私は、64歳から年金がもらえるのですが、給与が高いので年金はもらえないと聞きました。先日、年金の請求書が年金機構からきましたが、もらえないのなら請求しなくてもいいですよね。
A7 令和4年4月から65歳までの在職老齢年金の限度額が、47万に変更となっています。もらえる可能性もあるので、1度年金機構で試算してもらうことをお勧めします。また全額停止となっていたとしても請求だけはした方がよいです。その後の手続きが簡素化されることや請求忘れなど防止するうえでも請求することをお勧めします。
Q8 今日老齢年金の請求書を提出しましたが、いつからもらえるのでしょうか。
A8 年金の受給権が発生した月(特別支給の老齢厚生年金のもらえる年齢や65歳の誕生日)の翌月から支給されることになります。
請求書提出から1か月後に年金証書が送付され、それから1~2か月後に支給が始まります。(支給月には年金支払通知書が送付される。)
年金の支払いについては、2,4,6,8,10,12月の偶数月の15日に支払いされます。(最初の支給だけは、奇数月に支払いされる場合もある。)
Q9 今回特別支給の老齢厚生年金の請求書を提出しましたが、65歳の時もまた年金事務所に来て手続きしないといけませんか。
A9 65歳以降の年金は、本来の年金となりますが、65歳の誕生月の初め頃に年金請求書(はがき)が届きます。そのはがきに必要事項を書いて誕生月の末日までに返送してください。65歳に年金もらうのであれば、そのはがきだけで完了します。年金事務所に来る必要がありません。また、繰り下げ受給の希望があれば、繰り下げの年金に選んで返送するか、両方繰り下げの希望であれば、はがきを返送しないでください。
Q10 私は、62歳で現在働いていますので、年金をもらうつもりはありません。先日年金事務所から請求書が届きました。どうしたらよいのですか。今請求すると減額された年金となってしまいますので、請求しません。
A10 あなたの場合、62歳から特別支給の老齢厚生年金が支給されます。今請求すると減額された年金との考えのようですが、年金の繰り上げと勘違いされています。62歳から65歳までは特別支給の老齢厚生年金支給され、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金が支給されることになります。減額された年金が支給されることはありませんので、請求してください。
Q11 私は、先月31日で会社を退職しました。雇用保険の基本手当をもらおうと考えています。同時期に62歳となり、年金の請求書が来ました。年金はどのようになりますか。
A11 60歳以上65歳未満の間は、雇用保険の基本手当と特別支給の老齢厚生年金の両方が受け取れる場合は、どちらか有利な方を受給することになります。基本手当を選択した場合は、その間、年金は全額停止されます。基本手当を請求しなければ、年金が支給されます。基本手当と年金の額を比較して選択してください。障害年金や遺族年金と基本手当とは調整されません。
62歳からの特別支給の老齢厚生年金の請求をするように、請求書が送られてきたと思いますが、請求書は年金事務所に提出してください。雇用保険の基本手当を受給している間は、年金が停止されますが、基本手当受給終了後は、事後清算ののち年金の停止が解除となります。年金請求書の提出により、受給権がありますので手続することなく年金が受給することになります。